SaaS業界のマーケティング運営で重要なPQLとその見つけ方〜コホート分析活用〜

こんにちは:blush:仕事の合間で海外のSaaSの情報見ていると、「なるほど〜」と非常に参考になったりしているので合間に書き起こして投稿していこうと思っています。
なるべくわかりやすく書いていきたいですが、深夜帯に書いたりしているので迷走していたらすみません:joy:

※本投稿はBtoBマーケまたはSaaSのマーケ担当のかたに参考になりそうな内容かと思いますのでご了承ください!

SQLではなくPQL?

やっぱここ重要だなと思う話があります。
それは目標指標や数値関連の話です。名著「良い戦略、悪い戦略」にもあるように優れた戦略のファーストステップは診断から始まります。
私も数値関連のダッシュボードやスプレッドシートを見てはいじってを繰り返しています。

どの数字(KPI)をあげていくべきか、、、と。
数字が絞れてくると共にやることの選択肢も絞られてくるので、まずは選択の絞り込みにかなり練り込みます。

そこで本題なんですが、いわゆるビジネスモデルと数字(KPI)がリンクしているので、SaaS事業において今注目のPLG(Product Led Growth)は、どのようなモデルで運営されているのかを改めて整理していかないといけません。

PLGって何??
簡単に説明すると製品そのものが今までのマーケティングやセールス活動を主に担うGo to Market戦略をとることをPLGと呼んでいます。

SLG(Sales Led Growth)はSalesがアプローチするに足る条件にQualified(適格化)された状態のリード、つまりはSQL(Sales Qualified Lead)を有料顧客に転換する、というアプローチです。Qualifiedの条件はマーケティングチームが獲得したリードが例えば会社規模など営業に渡すための条件として満たしているかどうか、が基準となります。

SLGは、Sales sells product :セールスがプロダクトを売る
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出典:Mastering Product Experience In SaaS

一方でPLGにおいては、SQLではなくPQL(Product Qualified Lead)が核となります。これはSQLにおけるリード、つまりは連絡先情報ではなく、製品を使いはじめてそのユーザーが製品利用における一定の基準を満たした、ということが条件となります。SQLにおけるリードはそのサービスを利用していなくてもいいわけなので、フリーミアムやフリートライアルを前提としているPLGモデルならではと言えるわけです。

PLGは、Product sells itself :プロダクトがプロダクトを売る
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出典:Mastering Product Experience In SaaS

↓対比はこの記事がとてもわかりやすいですのでぜひご一読ください!



PQLを見定めるポイントはコホートにあり!

ただ、ここで大きな壁が実は立ちはだかるのが運用をしてみるとわかります。
PQLにおけるProduct(製品)利用がQualified(一定の水準に到達)された条件というのはどのように設定すればいいのでしょうか?

私がSQLとPQLを両方見てきて感じたのはSQLは圧倒的に設定しやすいということです。なぜかといえば基本的にはSQLの条件は会社規模、売り上げ、業種など静的な要素がほとんどであり、これらの条件はサービスのターゲットが決まっていれば自然と決まりやすく、数あるSaaSのサービスジャンルがあるにしても一般的に適用しやすいのです。

ところが、PQLになると話が変わってきます。PQLは製品の利用に関する水準になるのでサービスごとにその利用方法や仕様が違う以上は千差万別に存在しうることになります。当たり前に怖い話ですが間違ったKPIを目指してビジネスが運用されていれば事業の成長はできないわけなので、このあたりのノウハウはあまり出回っていない気がしていて困っていました。

日本にないなら、外をあたるしかない、ということで文献を探していた結果、ちょうど良い書籍が発売になりましてそこに体系的にまとまっていて勉強になり役に立ったので紹介していきたいと思います。

Product-Led Onboardingという書籍になります。

(すいません。洋書です。どなたか日本語版を作成していただきたいです)

Product-Led Onboarding: How to Turn New Users Into Lifelong Customers

こちらを読んでわかったことは、まず大前提としてすべてのProduct、サービスの最重要指標はリテンション(継続的な利用)であり、すなわちユーザーの習慣を作ることが最も大切なことだということです。

残酷な事実ですが、多くのSaaSサービスでプロダクトにサインアップした翌日の**継続率は40%**にまで落ちるそうです。この数字を改善するために製品を利用していく習慣づくりをしてあげるのが製品オンボーディングの重要なポイントです。

そして、ユーザーの習慣の効果を分析する大事な分析手法がコホート分析であり、PQLもこのコホート分析を活用して決定していきます。

下の図はコホートの例です。コホートはある製品に登録した日をDay0としてそこからの経過日数でどれだけ継続的にアクセスしてもらえたかをグラフにしています。



PQL条件を定めるステップ

ではここから、上述の図に基づいてどのようなステップでPQLの条件を決めていくかをステップで紹介します。

PQLを決定するためのステップ①コホートの継続率の落ち切る日数ポイントを見る
まずは継続率がほぼ落ち切る、つまりはここまで日数経過して継続していれば習慣になっっていると見ていいポイントを決定します。上の図で言えばサインアップして21日経過しているくらいの箇所のことを言います。21日後の継続率は5%ほどですがここまで使っていれば良い習慣と見てよいでしょう。まとめると、「x日継続している人達」をコホートグラフから決定するということです。

PQLを決定するためのステップ②PAIを仮定する
PAIをはProduct Adoption Indicatorの略です。つまり製品を継続的に使ってもらえる人がどんなキーアクションを達成しているかを表す指標ということです。この指標については以下のように仮説をたてます。

ユーザーがサインアップして最初の〜〜日以内に〜〜のアクションを少なくとも〜〜回行っている

たとえば、メッセージングアプリであれは、「サインアップして〜〜日までにメッセージを最低3回送っている」などを仮定します。

PQLを決めるためのステップ③ ①と②の円が最も重なるかを検証する
最後のステップは先ほど出した二つの要素が重なる領域が多いかどうかを検証します。
具体的にはPAIが「サインアップした日に最低3つメッセージを送っている」と仮定した場合、その集団と「21日継続している」集団の円が大きく重なっているかどうかを見ます。

下の図のようなイメージです。(whatsupのメッセージングアプリを例としています。)

この円が重なっている領域として大きければ、PQLのための条件を満たしたということで定義できるようになります。

今までのものをまとめると具体的には「サインアップした日に最低3つのメッセージを送っていれば21日継続する傾向がある」ということになります。

この「X日以内に最低Y回のキーアクションをしているとZ日継続する傾向がある」というポイントを見つけることがPQL発見の仕方となります。BtoBのSaaSなどであれば、サインアップしてから最低X週以内にY回のキー機能を利用した、セットしたら、Z週継続する傾向があるでもよい形です。

そして実はここで決めたPQLとカスタマープロファイル(業種や企業規模など売上に紐づけやすい顧客属性)の円を重ね合わせることでSQLが定義されていたのがこちらの本で学んでなるほどなーと学んだところです。

つまり、Salesが積極的にアプローチをかける対象の定義がPQLを元にして改めて決められている、というわけですね。

多くのSaaSの製品/サービスの運用者はお客様の獲得だけでなくその継続利用について頭を悩ましているのが自分たちのユーザーの何の目標をどの程度まで上げればいいのか、という課題だと思います。それさえうまくつかめればあとはそれをあげるために日々のテストを数多く試行錯誤するチャレンジに納得感をもって身を捧げられると思うので、困っている方がいましたらこちらも参考に一緒にノウハウを交換して話せればと思います。では!

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